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際に外国へ参りましたら、ステージそのものは200年たった劇場でも、公演によっては張りかえたり、あるいはハイテクの部品を導入したりしてバックヤードはすごい金をかけていますけれども、座席の方は意外と詰め詰めのままにしてあるのはそういうことかなと思いました。
ですから、例えばバイロイトの祝祭劇場なんていうのも、今は野球場のような木のベンチですし、痛いことおびただしい。そこに3時間もワーグナーの長大なオペラを見させられて、座らされているわけなんですけれども、席と席との間も非常に狭いです。ですから、中通路というのがありませんから、真ん中の人ほど休憩時間を早く切り上げて着席しておかないと、みんな向こうの人は立って待っています。それをごめんなさい、ごめんなさいと言って入っていくのは日本人ぐらいなものでありまして、日本人でもバイロイトヘ行くような人は、そういうことがよくわかっているかと思いますけれども、スタンディング・オベーションというのはそういうものだそうです。ですから、外国に行って、そういうスタンディング・オベーションの中にまじって拍手をするというのは、こんな快感というのか、楽しさ、それは一種スポーツにまさるぐらいの快感ではなかろうかと思います。
そういうものをやはり舞台のそでなり、あるいは客席の後ろなりから、それを手がけたプロデューサーが見ていたとしたら、そのプロデューサーの心の中の満足度、喜びというものはないと思うんですね。だから、初日の幕があいて、客席がどういう反応をするのか、それはもうこんな楽しみはございません。自分のキャスティングが間違っていなかった、自分の立てた企画は間違っていなかったということを実感するときの喜びを持つということは、プロデューサーの特権であると同時に、最も生きがいを感じる瞬間ではなかろうかとも思います。
ですから、企画担当、アートマネージメントをされるということに大いなる喜びを感じていただきまして、ご自分の担当された催しの幕が上がり、幕がおりるときの喜びを少しでも享受して、お客さま以上に享受をされることを、高いところからではございますが、お祈り申し上げるといいましょうか、そういうことで締めくくりたいと思います。失礼しました。(拍手)

 

○総合司会 
山下先生、どうもありがとうございました。
これで午前の部を終了いたします。(拍手)

 

 

 

 

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